表紙

俺の親友(♀)との距離感がバグりすぎてて、どう見ても付き合ってる件について

AI Generated Light Novel | 2026-04-20_215041 | Powered by gemini-3.1-pro-preview

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タイトル:『俺の親友(♀)との距離感がバグりすぎてて、どう見ても付き合ってる件について』

第1章:エンカウントは突然に。開幕からトップギアの親友誕生

「おい、お前。今『サムライ・バトラー』の新作コンボ動画見てただろ」
これが、俺とアイツの最初の会話だった。
高校の入学式が終わり、初めてのホームルームが始まるまでの気怠い時間。俺、相馬悠(そうまゆう)は、隣の席の女子から突然そんな言葉を投げかけられた。
声の主は、星野結衣(ほしのゆい)。肩口で切りそろえられたサラサラのボブヘアーに、少しだけつり上がった勝気な瞳。黙っていれば「元気系の可愛い女子」というカテゴリにすっぽり収まるであろう彼女は、初対面であるはずの俺のスマホ画面を覗き込み、猛禽類のように目を輝かせていた。
「……は? なんで分かったんだよ。ていうか、初対面の人間のスマホを覗き込むなよ」
俺が慌てて画面を隠すと、結衣は「ケチくさい男だな」と鼻で笑った。
「隠さなくてもいいじゃん。私、その動画のアップ主のプレイング、マジで尊敬してんだよね。特にあのキャンセル技からの空中コンボ、変態的なフレーム入力が必要なやつ。お前、あれできる?」
「できるわけないだろ。あれは人間やめてる奴の所業だ。俺なんてまだ地上コンボで手一杯だよ……って、いや待て。なんで女子高生が『変態的なフレーム入力』なんてマニアックな単語を息をするように使いこなしてんだよ」
「性別にゲームのプレイスキルは関係ないだろ。私は星野結衣。対戦格闘ゲームと深夜のジャンクフードをこよなく愛する女だ。お前は?」
結衣はニカッと白い歯を見せて笑い、俺に向かって右手を差し出してきた。少年漫画のライバルキャラが初登場時にするような、堂々たる握手の要求である。
「……俺は相馬悠。趣味はゲーム全般と、休日の昼寝だ」
「なんだその無気力な趣味。まあいい。悠、お前今日から私の相棒な」
「は? 相棒?」
「そう! 入学初日に隣の席の奴が、私が今一番ハマってるマイナー格ゲーの動画を見てたなんて、これはもう運命のエンカウントだろ。神が『お前らパーティー組め』って言ってるんだよ」
「神様も随分としょうもないお告げをするもんだな。俺はソロプレイヤー主義なんだが」
「うるさいうるさい。今日放課後、駅前のゲーセンで対戦な! 私が勝ったらお前は私にジュースを奢る。お前が勝ったら……私がジュースを奢ってやる!」
「どっちに転んでもジュースじゃねえか。しかも俺の奢る確率が高そうだし」
「細かいことは気にするな! 青春は勢いとノリだ!」
そう言って、結衣は俺の背中をバンバンと叩いた。痛い。こいつ、見た目に反して腕力がゴリラ並みにあるぞ。
それからの俺の高校生活は、この星野結衣という嵐のような女に巻き込まれることになった。
放課後のゲーセンでの熱戦。結衣は俺の予想を遥かに超えるプレイスキルを持っており、結果として俺は三連敗を喫し、彼女に缶のメロンソーダを奢る羽目になった。
「ぷはーっ! 勝利の後の炭酸は格別だな! 悠、お前なかなか筋がいいぞ。私のライバルとして育ててやってもいい」
「負けた相手に上から目線で言われると腹立つな……次は絶対勝つからな」
「おう、かかってこい! 何度でも返り討ちにしてやるよ!」
夕日に照らされた帰り道、並んで歩きながら他愛のないゲームの話で盛り上がる。男女の壁なんてものはそこには一切なく、俺たちはまるで小学校からの幼馴染の男子同士のように、気兼ねなく笑い合っていた。
「なぁ、悠。お前、マジで話しやすいわ。男友達っていうより、完全に『同志』って感じ」
「奇遇だな、俺もだ。お前みたいな口の悪くて遠慮のない奴、女子だと思ったことは一度もないぞ」
「なんだとコラ。一応、私はこれでも清楚系女子を目指してるんだぞ」
「どの口が言うか。清楚系はゲーセンで台パンギリギリのテンションで叫んだりしない」
「うるせえ! あれは情熱の表れだ!」
こうして、俺と結衣の「最高の友情関係」は幕を開けた。お互いに気を遣わず、言いたいことを言い合い、趣味を共有できる最高の親友。俺はこの関係がずっと続くのだと、そう信じて疑わなかった。


第2章:日常という名のコント劇場。ファミレスは俺たちの戦場だ

ファミレスで結衣が大げさな身振りで自作の謎ドリンクを悠に勧め、悠が呆れ顔でそれを見るシーン
ファミレスで結衣が大げさな身振りで自作の謎ドリンクを悠に勧め、悠が呆れ顔でそれを見るシーン

「あー、マジで疲れた。今日の体育、あの持久走のノルマは明らかにジュネーブ条約に違反してるだろ」
「お前はまずジュネーブ条約を読んでから出直してこい。ただの体力不足を国際問題にすんな」
放課後のファミレス。窓際のボックス席。俺と結衣のいつもの光景だ。
テーブルの上には、山盛りのフライドポテトと、ドリンクバーで調合された謎の色の液体(結衣作)が置かれている。
「いや、だってさ! 体育教師のあのマッチョ、絶対に私たちのことをスパルタ兵か何かと勘違いしてるって! 私のこの可憐な足が筋肉痛で悲鳴を上げてるんだよ!」
結衣は大げさに足をさすりながら、ポテトを三本まとめて口に放り込んだ。
「可憐な足ねぇ……ゲーセンの格ゲーで足元のペダルを親の仇みたいに踏み込んでる足の間違いじゃないか?」
「人聞きの悪いこと言うな! あれはリズミカルなステップワークだ! それより悠、この私が作った『ミラクル・ミックス・ジュース・改』飲んでみろよ。コーラとメロンソーダとカルピスを黄金比でブレンドした自信作だ」
「色が完全に沼の水なんだけど。致死量とかないだろうな」
「失礼な! 飲めばわかる、この芳醇な味わいが!」
結衣に無理やり押し付けられたグラスに口をつける。……うん、甘ったるさと炭酸がケンカしていて、控えめに言って最悪の味だ。
「……お前、味覚のセンスはマイナスに振り切ってるな」
「嘘だろ!? 私の舌では三ツ星レストラン級の評価が出てるのに!」
「お前の舌の判定基準がバグってんだよ」
俺たちがそんなふうにギャーギャーと騒いでいると、通りかかった同じクラスの女子グループが、チラチラとこちらを見てヒソヒソ話をしているのに気づいた。
「ねえ、相馬くんと星野さん、また一緒にいるよ」
「ほんとだー。あの子たち、いつもあんな感じでイチャイチャしてるよね」
「絶対付き合ってるよね、あれ。隠してるつもりなのかな?」
その声は、ばっちり俺たちの耳にも届いていた。俺は思わずため息をつき、結衣と顔を見合わせた。
「……おい、結衣。また言われてるぞ」
「ん? ああ、『付き合ってる説』な。相変わらず想像力が豊かな連中だこと」
結衣は全く気にする素振りもなく、再びポテトに手を伸ばす。
「お前、女子としてそういう噂立てられるの、嫌じゃないのか? 彼氏でもない男といつも一緒にいて、変な誤解されてるんだぞ」
「はあ? なんで私が嫌がらなきゃいけないんだよ。私たちは『最高に気が合う親友』だろ? 親友と一緒にご飯食べて、ゲームして、バカ話して何が悪い。他人の妄想なんて放っておけ」
「まあ、お前がそう言うならいいけどさ」
「それに……」と、結衣は急にニヤリと笑って俺の顔を覗き込んできた。「悠みたいな冴えない男と付き合ってるなんて噂、私の美貌の価値が下がるってもんだからな!」
「一言余計だバカ! お前こそ、中身が完全にオッサンだから彼氏なんて一生できないだろ!」
「なんだと!? もう一回言ってみろ、このもやし男!」
「もやしって言うな! 筋肉の代わりに知性が詰まってるんだよ!」
「知性? どこに? 昨日の数学の小テストで赤点ギリギリだった奴が言うセリフか!」
「ぐっ……それは言うな!」
結局、俺たちはまたしても漫才のような言い合いを始め、周囲の視線など完全に忘れてしまっていた。
俺にとって、結衣との時間は本当に居心地が良かった。異性であることを意識せず、飾らない自分でいられる。彼女の隣は、世界で一番リラックスできる特等席だった。
だからこそ、俺たちは周囲の「付き合ってるでしょ」という声に対して、心からの「親友だし!」という言葉を返し続けていた。この関係が恋愛なんていう面倒くさいものに発展するはずがない。俺たちは最高の相棒なのだから。


第3章:エンカウント・イン・マイ・ルーム。距離感ゼロの徹夜ゲーム合宿

暗い部屋でホラーゲームに驚いた結衣がパニックになって悠の腕にしがみつき、悠がコントローラーを持ちながら動揺するシーン
暗い部屋でホラーゲームに驚いた結衣がパニックになって悠の腕にしがみつき、悠がコントローラーを持ちながら動揺するシーン

「というわけで、今日から三日間、相馬家を星野家の前線基地とする!」
「勝手に人の家を占拠すんな。あと、靴は揃えろ」
夏休みの中盤。俺の親が親戚の不幸やら何やらで数日家を空けることになったと聞きつけた結衣は、なぜか大きなリュックを背負って俺の部屋に押し掛けてきた。
「いいじゃんかよー。私んち、今両親が喧嘩中でさ、空気が最悪なんだよ。避難させてくれよ、親友だろ?」
「親友だからって、年頃の男女が親のいない家で数日過ごすのは倫理的にどうなんだ」
「倫理? 何それ美味しいの? 大丈夫、私がお前を襲ったりしないから安心しろ!」
「俺が襲う可能性は微塵も考慮してないのかよ」
「はっはっは! 悠みたいなヘタレが私に手を出せるわけないだろ! むしろ返り討ちにして腕ひしぎ十字固めを決めてやる!」
「……お前のそういうところ、本当に女子力マイナスだよな」
ため息をつきつつも、俺は結衣を追い返すことはしなかった。なんだかんだ言って、一人で過ごす数日間は退屈だと思っていたし、こいつがいれば騒がしくて楽しいのは間違いない。
「ほら、さっそく準備しろ! 今日は徹夜で新作のホラーゲーム『ダーク・マンション』のクリアを目指すぞ!」
結衣はリュックから大量のスナック菓子と、パッケージが禍々しいゲームソフトを取り出した。
「お前、ホラーゲーム苦手じゃなかったか?」
「だ、誰が苦手だって!? 私はただ、急な大きな音に少しだけ敏感なだけで……!」
「それを世間ではビビりと言うんだよ」
夜も更け、部屋の電気を消してモニターの明かりだけが二人を照らす中、ゲームは佳境に入っていた。
「ギャアアアアアッ!! 出た! ゾンビ出た! 悠、撃て! 早く撃て!!」
「うるさいうるさい! 耳元で叫ぶな! 今リロード中だからちょっと待て!」
「待てるかあああ! 迫ってきてる! 私のキャラクターが食べられちゃう!! ぎゃあああ!」
結衣は完全にパニックに陥り、隣に座っている俺の腕にガシッと抱きついてきた。
「ちょっ、お前、腕掴まれたらコントローラー操作できないだろ! 離せ!」
「無理無理無理! 怖い! 悠、なんとかしてえええ!」
結衣の顔が俺の肩口に押し付けられ、彼女のシャンプーの甘い香りが鼻腔をくすぐる。普段は完全に「男友達」としてしか見ていない彼女だが、こうして物理的な距離がゼロになると、否応なしに「女の子」特有の柔らかさや体温が伝わってくる。
(……おいおい、ちょっと待て。いくら親友でも、この密着度は心臓に悪いだろ)
俺は内心で激しく動揺しながらも、必死に平静を装ってコントローラーを操作し、なんとか画面内のゾンビを撃退した。
「……ふう、倒したぞ。ほら、もう大丈夫だから離れろ」
「あ、ああ……助かった。マジで死ぬかと思ったわ」
結衣は照れ隠しのように鼻をこすりながら俺から離れた。その横顔が、モニターの青白い光に照らされて、少しだけ赤くなっているように見えたのは気のせいだろうか。
その後も夜通しゲームを続け、空が白み始めた頃。
「……ん……ふぁ……」
隣から規則正しい寝息が聞こえてきた。見ると、結衣がコントローラーを握りしめたまま、俺のベッドに寄りかかって眠りに落ちていた。
「おい、こんなとこで寝たら風邪引くぞ……」
声をかけても起きる気配はない。無防備な寝顔。普段の騒がしさが嘘のように静かで、長いまつ毛が頬に影を落としている。
「……黙ってれば、普通に可愛いんだけどな」
俺は思わずそんな独り言をこぼし、クローゼットからタオルケットを引っ張り出して彼女の上にそっとかけた。
その時、結衣が寝返りを打ち、彼女の手が俺の手に触れた。ひんやりとした指先。俺はなぜか急に心臓がドクンと跳ねるのを感じ、慌てて手を引っ込めた。
「……ばっかみたいだ。何ドキドキしてんだよ、俺」
俺たちは親友だ。最高の相棒だ。この感情は、ただの徹夜明けのテンションがおかしくなっているだけだ。
そう自分に言い聞かせながら、俺は結衣の寝顔から目を逸らし、再びゲーム画面に向き直った。しかし、ゲームのBGMよりも、自分の心音の方がうるさく感じられて仕方がなかった。


第4章:モブ・イケメンの襲来と、謎のバッドステータス『嫉妬』

夏休みが明け、二学期が始まってしばらく経った頃。
俺は自分の中に芽生え始めた「ある感情」を持て余していた。
「……おい、悠。聞いてるのか?」
「え? ああ、悪い。ちょっとボーッとしてた」
昼休みの教室。結衣が俺の机の前に座り、弁当箱をつついている。俺の視線は、結衣越しに廊下の方へと向いていた。
というのも、最近結衣の周りがやけに騒がしいのだ。
「星野さん、ちょっといいかな?」
そう言って教室に入ってきたのは、隣のクラスのイケメン、サッカー部のエースである水上(みなかみ)だった。爽やかな笑顔と高身長、おまけに性格も良いと評判の、俺とは対極にいるような男だ。
「ん? なに、水上くん」
結衣は唐揚げを頬張ったまま、暢気に返事をした。
「あのさ、今度の日曜日、もし暇だったら……駅前に新しくできたカフェ、一緒に行かない?」
教室の空気が一瞬でピリッとなった。周囲の女子たちが「水上くんが星野さんをデートに誘ってる!」と色めき立つ。
俺は持っていた箸を、思わず強く握りしめた。胸の奥が、チクチクと嫌な音を立てて痛む。なんだこれ。このモヤモヤした感情はなんだ。
「え? カフェ?」
結衣はキョトンとした顔で水上を見上げた。
「うん。星野さん、甘いもの好きだって聞いたから。そこのパンケーキ、すごく美味しいらしいんだ」
水上は完璧な笑顔で結衣を見つめている。誰がどう見ても、これは告白の前段階、「脈ありアピール」というやつだ。
俺の心の中の警報がガンガン鳴り響く。
(おい結衣、お前まさか……行くなんて言わないよな?)
なぜ自分がこんなに焦っているのか、理由を考える余裕もなかった。ただ、結衣が水上と一緒にいる姿を想像しただけで、どうしようもなく腹が立ってきた。
しかし、当の結衣は少し考え込んだ後、あっけらかんとした声で言った。
「あー、ごめん! 日曜日は悠と一緒に、隣町のゲーセンに遠征する約束してんだよね! その日限定の格ゲーの大会があってさ!」
「え……あ、そうなんだ。相馬くんと……」
水上の笑顔が引きつる。そりゃそうだ。イケメンのカフェの誘いを、冴えない男友達とのゲーセン遠征で断る女子高生なんて、天然記念物レベルだろう。
「うん! だからまた今度ね! 誘ってくれてありがと!」
結衣は全く悪気のない笑顔で水上を追い返した。水上は少し肩を落として教室を出て行った。
俺はホッと胸を撫で下ろすと同時に、強烈な脱力感に襲われた。
「……お前、いいのかよ。あんなイケメンの誘い断って」
俺が少し皮肉っぽく言うと、結衣は不思議そうに首を傾げた。
「は? なんで? お前との約束の方が先だったし、なによりパンケーキより格ゲーの大会の方が重要だろ」
「お前の脳内優先順位、バグりすぎだろ……女子としてそれでいいのかよ」
「いいの! 私は私のやりたいことをやるの! それより悠、日曜日の大会、絶対優勝するぞ! 私たちのタッグの恐ろしさを隣町に轟かせてやるんだ!」
結衣は拳を突き上げて意気込んでいる。
「……ああ、そうだな。絶対に勝とうな」
俺は力なく笑って答えた。
結衣は俺を選んでくれた。ただの「親友との約束」を優先しただけだと分かっていても、それは俺にとってどうしようもなく嬉しい事実だった。
だが同時に、俺は自分の感情の正体に気づき始めていた。
水上に対する、あの黒い感情。結衣が誰かに取られるかもしれないと想像した時の、胸がえぐられるような焦燥感。
これの正体を、俺は知っている。漫画や小説で嫌というほど見てきた感情だ。
「嫉妬」だ。
俺は結衣に対して、親友以上の感情を抱いている。ただの相棒だと思っていた彼女を、一人の「女の子」として、誰にも渡したくないと思っている。
その事実を突きつけられ、俺は内心で頭を抱えた。
(マジかよ……俺、こいつのこと好きになってるじゃん……)
「最高の友情」という名のぬるま湯に浸かっていた俺の心は、この日を境に、取り返しのつかないバグを起こしてしまったのだった。


第5章:イベント発生『文化祭』。親友の「女の子」化にバグる俺の脳内

秋が深まり、学校中が浮足立つ季節。文化祭のシーズンがやってきた。
俺たちのクラスの出し物は、定番中の定番「メイド&執事喫茶」に決まった。
「……なんだよ、その格好」
文化祭前日のリハーサル。教室の隅で、俺は目の前に立つ結衣の姿を見て、言葉を失っていた。
「なんだよとはなんだよ。見てわかんない? メイド服だよ、メイド服。文化祭の王道にして至高のコスプレ」
結衣はフリルのついたエプロンを翻し、くるりとその場で回ってみせた。
普段はズボンやジャージばかり着ている彼女が、膝上丈のスカートを穿いている。白いブラウス越しに、意外としっかりとした胸の膨らみが主張しており、首元には黒いリボン。そして何より、普段は無造作なボブヘアーが、今日は少しだけ内巻きにセットされていて、妙に大人っぽく見えた。
「どうよ? 私のメイド姿。少しは清楚で可憐な女の子に見えるか?」
結衣は両手でスカートの裾をつまみ、冗談めかして上目遣いで俺を見てきた。
ドクン、と心臓が大きく跳ねた。
「……似合ってない。お前にはジャージの方がお似合いだ」
俺は動揺を隠すために、わざとぶっきらぼうに言い放ち、プイッと顔を背けた。
「はぁ!? お前、素直じゃないなー! クラスの男子たちからは大絶賛だったんだぞ! 『星野さん、意外と足綺麗だね』とか言われちゃってさ!」
「……足なんて見せびらかすな。変な虫がつくぞ」
「変な虫ってなんだよ。お前、さっきからなんだか機嫌悪いな。どうしたんだよ」
結衣は不思議そうに顔を覗き込んでくる。その顔が近くて、彼女からふわりと甘い香りが漂ってきた。化粧なんてしていないはずなのに、いつもよりずっと「女の子」を意識させられる。
「……別に。機嫌なんて悪くない。ただ、お前がそんな格好してると、調子が狂うだけだ」
「ふーん? そっかそっか、なるほどな」
結衣はニヤニヤと笑いながら、俺の顔を下から覗き込む。
「もしかして悠くん、私のあまりの可愛さにドキドキしちゃってる? 私に惚れちゃった?」
いつもなら「馬鹿なこと言ってないで仕事しろ」とツッコミを入れるところだ。しかし、今の俺にはそれができなかった。
図星だったからだ。
「……っ、うるせえ! バカなこと言ってないで、お前も接客の練習しろよ!」
俺は顔が熱くなるのを感じながら、逃げるように結衣から距離を取った。
「あ、こら! 逃げるな! 照れ隠しするなー!」
結衣の声が背中から追いかけてくるが、俺は振り返ることができなかった。
文化祭当日。
結衣のメイド姿は想像以上の破壊力を発揮していた。彼女の明るく物怖じしない性格は接客にぴったりで、たちまちクラスの喫茶店は大盛況となった。
「お帰りなさいませ、ご主人様! オススメは私が愛情を込めてケチャップで絵を描くオムライスです!」
結衣が他の男子客に笑顔を振りまいているのを見るたびに、俺の胸はギリギリと締め付けられた。
(くそっ……なんだよあの笑顔。俺にだけ見せてればいいのに……)
そんな独占欲が湧き上がってくる自分に、俺自身が一番戸惑っていた。
「最高の親友」という肩書きは、今や俺にとって重い足枷となっていた。親友だからこそ、彼女の隣にいられる。でも、親友のままでは、彼女を自分だけのものにすることはできない。
文化祭の片付けが終わり、夕暮れの教室。
俺は一人でゴミ捨てから戻ってきたところで、黒板の前に立っている結衣を見つけた。
「……お疲れ、結衣」
「あ、悠。お疲れ様。いやー、疲れたけど楽しかったな!」
結衣はメイド服のまま、大きく伸びをした。夕日が窓から差し込み、彼女の横顔をオレンジ色に染めている。その光景が、あまりにも綺麗で、俺は息を呑んだ。
「なぁ、悠」
結衣が不意に真剣な声を出した。
「ん?」
「今日さ……いろんな男子に声かけられたり、可愛いって言われたりしたんだけどさ」
「……ああ。大人気だったな」
「でもね、私……」結衣は少しだけうつむき、モジモジと指先をいじりながら言った。「私が一番『可愛い』って言ってほしかったの、悠なんだけどな……」
「……え?」
俺の頭の中が真っ白になった。
結衣は顔を真っ赤にして、すぐに「あー! 今のナシ! 忘れて! テンションおかしくなってるだけだから!」と叫んで走り去ってしまった。
一人残された教室で、俺は自分の心臓が早鐘のように打っているのを感じていた。
バグっていたのは、俺の脳内だけじゃなかったのかもしれない。
「親友」という仮面が、音を立てて崩れ落ちていく音がした。


第6章:最終決戦。親友ルートから恋人ルートへのフラグ建築

夕暮れの公園のブランコの前で、結衣が涙をこぼしながらも満面の笑みで悠の胸を軽く叩き、二人が両思いになるシーン
夕暮れの公園のブランコの前で、結衣が涙をこぼしながらも満面の笑みで悠の胸を軽く叩き、二人が両思いになるシーン

文化祭のあの一件以来、俺と結衣の間の空気は明らかに変わってしまった。
いつものようにファミレスに行っても、ゲーセンに行っても、どこかぎこちない。会話のテンポは相変わらずだが、ふとした瞬間に視線が絡むと、お互いにパッと目を逸らしてしまう。
「親友」という枠組みの中で無邪気にじゃれ合っていた日々は、もう戻ってこない。俺たちは「異性」としての互いを強烈に意識し始めてしまったのだ。
このままじゃダメだ。
関係が壊れるのを恐れて現状維持を選ぶのは、俺の性に合わない。ゲームで言えば、ここで選択肢を間違えればバッドエンド直行だ。フラグが立っているなら、自分から回収しに行かなければならない。
文化祭の振替休日の夕暮れ。俺は結衣を、家の近くの公園に呼び出した。
誰もいない公園。ブランコに並んで座り、俺たちはしばらく無言で夕日を眺めていた。
「……で? わざわざこんな時間に呼び出して、何の用だよ」
先に口を開いたのは結衣だった。彼女はブランコの鎖を両手でギュッと握りしめ、少し不安そうな顔で俺を見ている。
「……おう。ちょっと、大事な話があってな」
俺は深呼吸をして、自分の気持ちを整理した。
「結衣。俺たち、高校に入ってからずっと一緒にいて、最高に気が合う『親友』だったよな」
「……うん。そうだな。お前は私の最高の相棒だ」
結衣の声が少し震えている。彼女も、俺が何を言おうとしているのか、勘付いているのかもしれない。
「俺も、お前のこと最高の相棒だと思ってる。一緒にゲームして、バカなこと言って笑って……その時間が、俺にとって一番大事なものになってる」
「……」
「でもさ、最近……俺、バグってんだよ。お前が他の男と話してるのを見ると腹が立つし、メイド服姿のお前を見て、マジで可愛いとか思っちまったし……」
俺の言葉に、結衣はビクッと肩を揺らし、顔を真っ赤にしてうつむいた。
「俺、お前のこと、もう『親友』として見れない。……好きだ、結衣。俺と、付き合ってくれ」
言った。ついに言ってしまった。
心臓が口から飛び出しそうなほどバクバクしている。これで結衣に「そんなつもりじゃなかった」と拒絶されれば、俺たちの関係は完全に終わる。
長い沈黙。
風が吹き抜け、公園の木の葉がカサカサと音を立てる。
やがて、結衣はゆっくりと顔を上げた。彼女の瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。
「……バカ悠」
「えっ」
「遅いんだよ、バカ! 私がどんだけ待ってたと思ってんだよ!」
結衣は立ち上がり、俺の胸にドンッと軽く拳を当てた。
「……待ってた?」
「当たり前だろ! 文化祭のあの日から、私ずっとお前からの言葉を待ってたんだからな! なのに全然言ってこないから、私から言おうか迷ってて……もう、マジでヘタレ!」
結衣はボロボロと涙をこぼしながら、子供のように泣き笑いの顔になった。
「お、おい、泣くなよ……」
「泣いてない! これは目にゴミが入っただけだ!」
「強がるなよ。……じゃあ、返事は?」
俺が恐る恐る聞くと、結衣は腕で涙を乱暴に拭い、ニカッといつもの勝気な笑顔を見せた。
「……しょうがないな。悠みたいなヘタレの面倒を見れるのは、私くらいしかいないし。付き合ってやるよ。相棒から、彼女に昇格してやる!」
「……上から目線だな。まあ、お前らしいけど」
俺は立ち上がり、結衣と向かい合った。
「よろしくな、結衣」
「おう! よろしく、悠!」
俺たちは、出会ったあの日のように、バチン! と勢いよくハイタッチを交わした。
ロマンチックなハグやキスなんてない。でも、それが俺たちらしいと思った。
「親友」という関係から一歩踏み出した俺たちは、こうして新しいステージへと進むことになった。


第7章:エピローグ編。「親友」のまま恋人になった二人の、新しい関係の始まり

「おい、彼女。今日のデートの行き先だが、駅前にできた新しいゲーセンでどうだ」
「おっ、彼氏。わかってんじゃん。あそこの新作格ゲー、ロケテやってるらしいから絶対行きたかったんだよね」
俺たちが付き合い始めてから、一ヶ月が経った。
週末の駅前。俺たちは並んで歩きながら、相変わらずバカみたいな会話を繰り広げていた。
端から見れば、恋人同士というよりは、完全にただの悪友にしか見えないだろう。
「あ、でもその前にファミレス寄ろうぜ。私、新作のパフェが食べたい」
「お前、ゲームの前にパフェ食ったら手がベタベタになってコントローラー滑るだろ。計画性がないな」
「ハンカチで拭けばいいだろ! 乙女のスイーツ欲を甘く見るな!」
「乙女って柄かよ」
「なんだとコラ!」
ギャーギャーと言い合いながら歩いていると、すれ違ったカップルがこちらを見て微笑ましいような、呆れたような視線を向けてきた。
『付き合ってるでしょ』と噂されていた頃と、俺たちのノリは何も変わっていない。
漫才のようにツッコミとボケを繰り返し、遠慮なく言いたいことを言う。
でも、決定的に違うことが一つだけある。
「……ほら、手」
俺がぶっきらぼうに右手を差し出すと、結衣は一瞬顔を赤くして、それから嬉しそうに俺の手をギュッと握り返してきた。
「……手汗かいたら離すからな」
「かかないように努力しろよ。ていうか、お前の手、意外とごつごつしてて男らしいんだな」
「当たり前だろ、男なんだから」
繋いだ手から伝わってくる体温。これが、俺たちが「親友」から「恋人」になった何よりの証拠だった。
「なぁ、悠」
「ん?」
「私さ、お前と付き合えてマジで良かったわ。だって、一番気が合う親友が、そのまま彼氏になったんだもん。こんな最高なことないだろ」
結衣は繋いだ手をぶんぶんと振りながら、太陽みたいな笑顔を見せた。
その笑顔を見ると、俺の胸の奥がじんわりと温かくなる。
「……そうだな。俺も、お前が彼女で良かったと思ってるよ」
「おっ、素直じゃん! じゃあその素直な彼氏に、今日のゲーセン代はおごってもらおうかな!」
「は? それとこれとは話が別だろ! 勝負は実力で決めるべきだ!」
「ケチ! さっきの感動を返せ!」
俺たちは笑い合いながら、新しいゲーセンへと向かって歩き出した。
周囲から見れば、俺たちの距離感はバグっているように見えるかもしれない。男同士の友情のようなノリで、でもしっかりと手は繋いでいて、どう見てもバカップルだ。
でも、これが俺たちの正解なんだと思う。
最高の親友であり、最高の恋人。
俺たちのエンカウントから始まったこの物語は、これからもバカバカしく、楽しく、そして少しだけ甘く続いていくのだろう。
「おい、悠! 早くしないと対戦台埋まるぞ! 走れ!」
「引っ張るな! 転ぶだろ!」
俺の親友で、俺の彼女。星野結衣。
こいつとの関係は、どんな神ゲーよりも面白くて、俺は一生このゲームをクリアするつもりはない。