表紙

俺の最高の親友(♀)が、どう見ても俺の彼女すぎる

AI Generated Light Novel | 2026-04-25_213901 | Powered by gemini-3.1-pro-preview

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タイトル:『俺の最高の親友(♀)が、どう見ても俺の彼女すぎる』

第1章:運命のエンカウントは格ゲーの筐体越しに

「おりゃあああ! そこだ、隙ありぃ!」
「甘い甘い甘い! その起き上がりは読めてんだよ!」

激しいボタンの打鍵音と、レバーをガチャガチャと回す音がゲームセンターのフロアに響き渡る。
俺、相沢拓斗(あいざわたくと)は、高校の入学式を終えたその足で駅前のゲーセンに寄り道していた。真新しい制服は少し窮屈だったが、俺のホームグラウンドであるこの薄暗い空間に入ればそんなものは関係ない。
プレイしているのは、現在絶賛稼働中の大人気対戦格闘ゲーム『ストリート・バトラーズ』。俺の操るキャラは、怒涛の10連勝を記録し、ギャラリーもちらほらと集まり始めていた。
「ふっ、俺の無敗伝説は高校生になっても健在だな……」
一人悦に入っていたその時だ。対面側の筐体にチャリンと硬貨が投入される音が響き、画面に『Here Comes A New Challenger!!』の文字がデカデカと表示された。
「おっと、乱入か。いいだろう、新入生の俺が洗礼を浴びせてやるよ」
意気揚々と対戦を始めた俺だったが、開始数秒で冷や汗をかくことになった。
なんだこいつ、めちゃくちゃ強い。
俺の牽制は全て完璧なガードで防がれ、少しでも隙を見せれば容赦のないコンボが飛んでくる。ドット単位の体力ゲージを削り合う、息の詰まるような死闘。
最終ラウンド、お互いの体力が残りわずかとなった瞬間、相手が放った必殺技の硬直を突いて、俺は渾身の昇竜コマンドを入力した。
「いっけええええええ!」
画面の中で俺のキャラがアッパーを放ち、相手をノックアウトする。画面に『K.O.』の文字が浮かび上がった瞬間、俺は思わずガッツポーズをした。
「しゃあっ! 勝った!」
「くっそおおおおおお! まじかよ今の、反応速度バケモンか!?」
対面側の筐体から、信じられないほど通る声が聞こえてきた。しかも、明らかに女の子の声だ。
立ち上がって筐体の横から顔を出してきたのは、俺と同じ真新しい高校の制服を着た、肩口で切りそろえた黒髪が印象的な美少女だった。ぱっちりとした大きな瞳が、悔しそうに俺を睨みつけている。
「お前、やるやんけ! 今の最後のカウンター、マジでエグかったぞ!」
「えっ……あ、女子?」
俺が戸惑いながら言うと、彼女はバンッと筐体を叩き、ニカッと笑った。
「女とか男とか関係ねー! ゲーセンの中じゃ強さが全てだろ! にしてもお前、いい腕してんな。私の連勝記録を止めたのはお前が初めてだぜ」
「いや、俺もギリギリだったけど……てか、お前も新入生?」
「おうよ! 今日からこの近くの高校に通うんだわ」
「奇遇だな、俺もだ」
制服のネクタイとリボンの柄が同じであることに気づき、俺たちは顔を見合わせた。
「まじか! じゃあ同級生じゃん! 私は星宮凛(ほしみやりん)! お前、名前なんていうの?」
「俺は相沢拓斗だ」
「おっしゃ拓斗、今日からお前は私のライバルであり、相棒な! よし、ジュース奢ってやるから反省会すんぞ!」
星宮はそう言うと、俺の腕をガシッと掴んで自販機コーナーへと引っ張っていった。
ベンチに並んで座り、奢ってもらったコーラを飲みながら、俺たちは先ほどの対戦について熱く語り合った。どの技の発生フレームがどうだの、あのコンボの繋ぎがどうだのと、初対面とは思えないほど会話が弾む。
「いやー、マジで拓斗と対戦するの超楽しいわ。明日も絶対ここ来いよな!」
「言われなくても来る予定だったよ。次も返り討ちにしてやるから覚悟しとけ」
「言ってろ! 明日は私が絶対勝つ!」
屈託のない笑顔で笑う星宮を見て、俺は不思議な居心地の良さを感じていた。美少女と話しているという緊張感は一切なく、まるで小学生の頃からの男友達とバカ話をしているような感覚。
これが、俺と星宮凛の「最高の親友関係」の始まりだった。出会ったその日から、俺たちは完全に波長が合い、性別の壁を越えた絶対的な友情を築き上げていくことになる。まさかこの関係が、後々周囲から「どう見ても恋人だろ」とツッコミを受けまくることになるとは、この時の俺は微塵も思っていなかった。


第2章:日常という名の漫才ライフ

高校2年の春。俺と凛は、学校帰りのファミレスのボックス席に向かい合って座っていた。
テーブルの上には、俺が頼んだハンバーグドリアと、凛が頼んだ山盛りのフライドポテトが置かれている。
「ふははは! 見よ拓斗、ついに完成したぞ! メロンソーダとカルピス、そして少量のウーロン茶を黄金比でブレンドした究極のポーションが!」
凛はドリンクバーのグラスを高く掲げ、魔王のような高笑いを上げている。グラスの中では、蛍光グリーンと乳白色が混ざり合った、この世の終わりみたいな色をした液体が怪しく気泡を立てていた。
「お前、それ絶対腹壊すぞ。ていうかウーロン茶入れる意味なんだよ」
「バカめ、ウーロン茶の渋みがメロンソーダの甘さを引き立てるんだよ! スイカに塩をかける理論と同じだ!」
「絶対違うからな。一口飲んでみろよ、絶対後悔するから」
俺が呆れ顔で言うと、凛は「余裕だし」とストローを咥え、ズズッと謎の液体を吸い込んだ。
次の瞬間、凛の動きがピタッと止まった。大きな瞳がさらに見開き、顔面がみるみるうちに青ざめていく。
「……どうだ、お味の方は」
「…………拓斗、これ、やばい。なんか、胃の中でウーロン茶とカルピスが喧嘩してる……」
「だから言っただろうが! ほら、水飲め水!」
俺が慌ててお冷を差し出すと、凛は涙目でそれを受け取り、一気に飲み干した。
「ぷはぁっ……死ぬかと思った。お前、よく私を止めなかったな!」
「俺のせい!? 完璧に自己責任だろ今の!」
そんな漫才のようなやり取りをしていると、通路を歩いてきたクラスメイトの女子二人組、佐藤さんと鈴木さんが足を止めた。
「あ、相沢くんと星宮さん。今日も相変わらずラブラブだね〜」
佐藤さんがニヤニヤしながら言ってくる。俺と凛は顔を見合わせ、全く同じタイミングで口を開いた。
「「いや、親友だから!!」」
見事なユニゾン。声のトーンから間合いまで完璧に一致していた。
「えー、でも二人って毎日一緒にいるし、休日もいつも遊んでるんでしょ?」
鈴木さんが不思議そうに首を傾げる。
「だから親友なんだって。男同士の熱い友情みたいなもんだよ」
俺がそう言うと、凛もウンウンと頷く。
「そうそう! 拓斗は私の最高の相棒だからな。休日に一緒にゲーセン行ったり、家でゲームしたりするのは、親友として当然の義務だろ?」
「親友の定義、なんかバグってない? それ普通にデートって言うんだよ」
「デート!? バカ言え、こいつとデートなんて色気なさすぎて草生えるわ!」
「それは俺のセリフだ! お前とイルミネーション見に行くくらいなら、家でレベル上げしてた方がマシだわ!」
「あぁ!? 言ったなテメェ、表出ろ!」
「上等だ、格ゲーでボコボコにしてやる!」
ギャーギャーと言い合う俺たちを見て、佐藤さんと鈴木さんは「はいはい、ごちそうさま」と呆れたように笑いながら去っていった。
「まったく、あいつらは何も分かってねーな」
凛はフライドポテトに手を伸ばしながら、不満げに口を尖らせる。
「だよな。俺たちが付き合ってるわけないだろ。完全に気の合う男友達って感じなんだから」
「そうそう! お前の前で乙女ぶるなんて、今さら無理だしなー」
凛はそう言いながら、ケチャップをたっぷりつけたポテトを俺の口にグイッと押し込んできた。
「んぐっ! お前、いきなり何すんだよ!」
「ほら、食え食え! 私のポテトを分けてやるんだから感謝しろよな」
「……お前なぁ」
文句を言いながらも、俺はそのポテトを咀嚼する。うん、美味い。
周りから見れば、俺たちのこの距離感は確かにおかしいのかもしれない。でも、俺たちにとってはこれが「普通」なのだ。恋愛感情なんていう面倒なものは一切ない、純度100%の最高の友情。
俺はそう信じて疑わなかった。この心地よい日常が、ずっと続くと思っていたのだ。


第3章:俺の部屋が親友のセーブポイントになった件

主人公の部屋でバランスを崩して倒れ込み、畳の上で至近距離で見つめ合いながらお互いを意識してしまうシーン
主人公の部屋でバランスを崩して倒れ込み、畳の上で至近距離で見つめ合いながらお互いを意識してしまうシーン

夏休みも中盤に差し掛かったある日のこと。
俺の両親が親戚の結婚式に出席するため、泊まりがけで家を空けることになった。
それを学校帰りに何気なく凛に話したところ、彼女の目はカッと見開かれた。
「マジか! 拓斗の家、三日間親いないの!?」
「あぁ、まあな。だから飯とか自分で適当に済ませないといけなくて面倒くさ——」
「おっしゃ! じゃあ今日から三日間、拓斗の家でゲーム合宿な!!」
「……はい?」
「親がいないなら、夜通しゲームし放題だろ! 私、お泊まりセット取ってくるから、一時間後に迎えに来いよ!」
嵐のように言い残し、凛は走って帰っていった。
そして現在。俺の部屋には、なぜか当然のようにパジャマ姿の凛が胡座をかいて座っている。
「ぷはーっ! やっぱ風呂上がりのコーラは最高だな!」
凛は俺の部屋の冷蔵庫(親友の特権で勝手に使っている)から取り出したコーラを一気飲みし、満足げに息を吐いた。
彼女が着ているのは、なぜか俺の大きめのTシャツと、短いショートパンツ。風呂上がりのせいで、ほんのりと石鹸の香りが漂ってくる。
「……お前さ」
「ん? なんだよ、早く次のクエスト行くぞ」
コントローラーを握りしめ、画面を凝視する凛。その無防備すぎる太ももが視界の端に入り、俺は思わず目を逸らした。
「ちょっとは警戒心とか持てよ。一応、俺も男なんだけど」
俺がため息混じりに言うと、凛は不思議そうに首を傾げた。
「は? なんで親友のお前に警戒しなきゃなんないんだよ。お前、私に手ぇ出すのか?」
「出すかアホ!!」
「だろ? だったら問題ないじゃん。私たちは魂で結ばれた相棒なんだから、性別なんて些細な問題だろ」
「お前のその謎理論、いつか痛い目見るぞ……」
「大丈夫だって! 拓斗はそんなことする奴じゃないって、私が一番よく分かってるし!」
ニカッと笑う凛の顔を見て、俺の心臓がトクンと不自然に跳ねた。
いやいやいや、待て待て。相手は凛だぞ。いつもゲーセンで煽り合って、ファミレスでアホなことしてるあの凛だ。ドキドキする要素なんて微塵もないはずだ。
俺は頭をブンブンと振り、無理やり意識をテレビ画面に向けた。
「ほ、ほら! さっさとボス戦行くぞ! 今回こそは絶対倒すからな!」
「おっ、言うねえ! 私のサポートに頼りきりのくせに!」
「誰が頼りきりだ! 俺の火力があってこそのパーティーだろうが!」
言い合いながらゲームに没頭する。画面の中では、俺たちの操るキャラクターが息の合った連携で巨大なモンスターを追い詰めていく。
「いっけえええ! 拓斗、そこだ!」
「もらったぁぁぁ!!」
俺の必殺技が見事に決まり、ボスのHPゲージがゼロになった。
「しゃあっ! 倒した!!」
「やったああああ!!」
歓喜の声を上げ、俺たちは当然のようにハイタッチを……するはずだった。
勢い余って立ち上がった凛が、床に転がっていた空のペットボトルを踏みつけ、バランスを崩したのだ。
「わっ!?」
「おいっ、危な——!」
俺は咄嗟に手を伸ばし、倒れ込んでくる凛の体を抱き止めた。
ドサッという音と共に、俺は畳の上に仰向けに倒れ、その上に凛が覆い被さる形になった。
「いってて……わりぃ拓斗、助かっ——」
顔を上げた凛と、至近距離でバッチリ目が合う。
お互いの鼻先が触れそうなほどの距離。風呂上がりの彼女の熱気と、甘いシャンプーの香りが直接鼻腔をくすぐる。
静まり返った部屋の中に、ドクン、ドクンと、やけに大きな心臓の音が響いた。それが俺のものなのか、凛のものなのか、それとも両方なのかは分からない。
「……あっ、えと」
いつもは男勝りな凛の顔が、みるみるうちに赤く染まっていく。その反応を見て、俺も一気に顔に熱が集まるのを感じた。
「お、重いぞバカ。早くどけよ」
「あ、ご、ごめんっ! 今のは不可抗力っていうか、その!」
慌てて飛び退く凛。俺もそそくさと起き上がり、お互いにそっぽを向いたまま沈黙が流れる。
「……親友、だよな」
「あ、当たり前だろ! 男同士のハプニングみたいなもんだ、気にするな!」
そう言い合いながらも、俺たちはその夜、一度も目を合わせることなくゲームを続けることになった。
親友だから、これでいいんだ。そう自分に言い聞かせるほどに、俺の心の中には、今まで感じたことのない「バグ」のような感情が生まれ始めていた。


第4章:親友がモテるのは鼻が高い……はずなのに

秋が深まり、学校は文化祭の準備で活気づいていた。
放課後の教室。俺と凛は、クラスの出し物である「お化け屋敷」の小道具作りに駆り出されていた。
「なぁ拓斗、この血のり、もう少し赤黒い方がリアルじゃね?」
「いや、それ以上やったらガチすぎて女子が泣くぞ。ただでさえお前の作ったゾンビの首、クオリティ高すぎて引かれてるんだから」
「ふはは! 私の芸術的センスに嫉妬しているのだな!」
段ボールと絵の具にまみれながら、いつものようにバカ話をしていると、教室の入り口から声が掛かった。
「あのー、星宮さん、いるかな?」
顔を上げると、そこに立っていたのは他クラスの先輩だった。サッカー部のレギュラーで、学校でも有名なイケメンの結城(ゆうき)先輩だ。
「あ、はい。私ですけど」
凛が絵の具のついた手を拭きながら立ち上がると、結城先輩は少し照れたような顔で言った。
「ちょっと、いいかな。裏庭まで来てほしいんだけど……」
その瞬間、教室の空気がピタッと止まった。周りのクラスメイトたちが、ニヤニヤしながら俺と凛の顔を交互に見ている。
「……お、星宮に春が来たか?」
俺は努めて明るい声を出して、凛の背中をポンと叩いた。
「茶化すなよ。なんか用があるだけだろ」
凛は少し戸惑ったような顔をしながらも、「すぐ戻るから、筆洗っといて!」と言い残して教室を出て行った。
教室には、「あの結城先輩が星宮に!?」「ついに相沢と星宮のコンビも解散かー?」というヒソヒソ声が響く。
俺は無言で筆を洗いながら、胸の奥に広がる謎のモヤモヤを持て余していた。
親友に彼氏ができそうなんだ。喜ばしいことじゃないか。結城先輩なら顔も性格もいいし、凛にはもったいないくらいの優良物件だ。
でも、もし凛が先輩と付き合うことになったら?
休日、一緒にゲーセンに行く時間はなくなるだろう。ファミレスでアホなドリンクを作ることも、俺の家で夜通しゲームをすることも、全部「彼氏」に遠慮してできなくなる。
「……なんだよそれ、超つまんねーじゃん」
気づけば、俺は筆を放り出し、教室を飛び出していた。
「あ、おい相沢! どこ行くんだよ!」
クラスメイトの声を背中に受けながら、俺は階段を駆け下りる。
自分でも何をしているのか分からなかった。ただ、このまま凛がどこか遠くに行ってしまうような気がして、居ても立っても居られなかったのだ。
こっそりと裏庭に近づき、校舎の陰から様子を窺う。我ながらストーカーみたいで最高にダサい。でも、確かめずにはいられなかった。
木漏れ日が落ちる裏庭のベンチの前で、結城先輩と凛が向かい合って立っている。
「急に呼び出してごめんね。星宮さん、いつも元気で楽しそうで、前から気になってたんだ」
先輩の甘い声が、風に乗って微かに聞こえてくる。
「俺と、付き合ってくれませんか?」
直球の告白。絵に描いたような青春のワンシーン。
俺は呼吸を止め、壁に背中を預けた。
胸が苦しい。胃のあたりがギュッと締め付けられるような感覚。
これが「嫉妬」だということに、俺はもう気づいていた。親友としてではなく、一人の男として、俺は凛を他の誰にも取られたくないと思っていたのだ。
「……頼む、断ってくれ」
誰にも聞こえない声で、俺はポツリと呟いた。
今まで「親友だから」という言葉を隠れ蓑にして、自分の本当の気持ちから目を背けてきた。でも、もう誤魔化しきれない。
俺は、星宮凛のことが好きなんだ。
壁の向こう側から聞こえてくる凛の返事を、俺は祈るような気持ちで待ち続けた。


第5章:その感情の名前は、バグではなく仕様です

裏庭に流れる沈黙。結城先輩の告白に対し、凛はどう答えるのか。
俺は壁の裏側で、心臓が爆発しそうなほどの緊張感の中で耳を澄ませていた。
「……すみません、先輩」
凛の、いつもより少しトーンの低い声が聞こえた。
「私、先輩のことはすごい人だなって尊敬してます。でも、付き合うとか、そういうのは……ごめんなさい」
「……そっか。他に好きな人がいるのかな?」
結城先輩の少し残念そうな声。それに対する凛の返答は、俺の予想をはるかに超えるものだった。
「好きな人っていうか……私には、一番一緒にいて楽しい『相棒』がいるんです」
「相棒?」
「はい。そいつ、口悪くて、ツッコミも容赦なくて、ゲームで負けるとすぐムキになるガキみたいな奴なんですけど……でも、そいつとバカやって笑ってる時間が、私にとって一番大事なんです」
凛の言葉に、俺は息を呑んだ。
「だから、今は誰かと付き合うとかじゃなくて、そいつの隣で一番の親友でいたいんです。本当に、ごめんなさい」
「……そっか。はは、なんか羨ましいな、その相棒くんが」
結城先輩は優しく笑うと、「それじゃあ、また学校で」と言って去っていった。
裏庭に一人残された凛が、ふぅっと大きく息を吐く音が聞こえる。
俺は壁から離れ、少し遠回りをしてから、偶然を装って裏庭の入り口から姿を現した。
「おーい、星宮。筆洗い終わったぞー……ってお前、何黄昏てんの?」
わざとらしく声をかけると、凛はビクッと肩を震わせ、こちらを振り返った。
「た、拓斗! お前、いつからそこに!?」
「今来たとこだけど? てか、結城先輩とどうなったんだよ。ついに彼氏ゲットか?」
俺がニヤニヤしながら聞くと、凛は顔を真っ赤にして、持っていた段ボールの切れ端を俺に投げつけてきた。
「うっさい! 断ったわバカ!」
「マジで!? お前、あのイケメン振ったの? もったいねー!」
「もったいなくねーよ! イケメンとデートして緊張するより、お前とゲーセンで格ゲーして煽り合ってる方が100万倍おもしれーんだよ!」
凛は怒ったようにそう言うと、ズンズンと歩み寄り、俺の胸ぐらを軽く小突いた。
「お前以外に、私と全力でバカやれる奴なんていねーだろ。だから……私はお前がいれば、それで十分なんだよ」
少し照れくさそうに目を逸らしながら言う凛の顔を見て、俺の心の中にあったモヤモヤが一瞬で吹き飛んでいくのを感じた。
こいつにとって、俺は「特別」なんだ。
他の誰にも代えられない、唯一無二の存在。
「……お前、それ結構恥ずかしいセリフだぞ」
「うるせえ! 言わせたのはお前だろ!」
「はいはい。じゃあ、その最高の相棒がジュース奢ってやるから、教室戻るぞ」
「マジ!? じゃあ私、新作のいちごミルクフラペチーノがいい!」
「自販機にそんなハイカラなもんあるか!」
いつものように漫才のような掛け合いをしながら、俺たちは校舎へと歩き出す。
夕日が差し込む渡り廊下。隣を歩く凛の横顔を見つめながら、俺は確信した。
この関係を「親友」という言葉で縛っておくのは、もう限界だ。
友情という土台の上に積み上げられた、この居心地の良さと、胸が苦しくなるほどの愛おしさ。
この感情の名前は、バグじゃない。
俺という人間に最初から組み込まれていた、星宮凛に対する「恋」という仕様なんだ。
俺は決意した。この最高の親友関係を、次のステージへと進めることを。


第6章:親友ルートからのフラグ回収

クリスマスイブのイルミネーションの下、ベンチで告白を受け入れた凛が照れ隠しに主人公の頬を両手で挟んで笑いかけるシーン
クリスマスイブのイルミネーションの下、ベンチで告白を受け入れた凛が照れ隠しに主人公の頬を両手で挟んで笑いかけるシーン

冬の足音が近づく12月。クリスマスイブの夜。
俺と凛は、駅前の広場に設営された巨大なイルミネーションツリーの下を歩いていた。
周囲は当然のようにカップルだらけ。腕を組み、身を寄せ合う男女が溢れる中、俺たちはいつも通り少し距離を空けて並んで歩いている。
「うわー、カップルばっかだな! 見ろよ拓斗、あそこのバカップル、写真撮るのに10分くらいかけてるぜ」
「お前なぁ、声デカいって。聞こえたらどうすんだよ」
「事実だろーが。にしても、なんで私らクリスマスイブに一緒にいるんだ? お前が『暇なら駅前こい』って呼び出したんだろ?」
凛はコートのポケットに手を突っ込みながら、不思議そうに俺を見上げる。
「……お前、クリスマスに親友とイルミネーション見て、悲しくならないのか?」
「はぁ? なんでだよ。一人で家でゲームしてるより、お前と外で肉まん食ってる方が楽しいに決まってんだろ」
凛はそう言って、コンビニで買った肉まんを美味しそうに頬張った。
本当に、こいつはブレない。
俺は少し苦笑しながら、広場の端にあるベンチを指差した。
「ちょっと座ろうぜ。コーヒー買ってくるから」
自販機で温かい缶コーヒーを二つ買い、凛の隣に座る。冷え切った手に、缶の熱が心地よい。
「ほらよ」
「サンキュ」
プルタブを開け、一口飲む。甘い微糖のコーヒーが、冷たい空気に乗って喉の奥に流れていく。
「なぁ、凛」
「んー?」
「俺たちさ、高校入学してからのこの2年弱、ずっと周りから『付き合ってる』って言われてきたよな」
俺が唐突に切り出すと、凛は肉まんを咀嚼する手を止め、不思議そうにこちらを見た。
「あー、言われてるな。未だにクラスの女子から『いつ結婚すんの?』とかからかわれるし。めんどくさいよなー」
「……めんどくさいからさ」
俺は缶コーヒーをギュッと握りしめ、真っ直ぐに凛の目を見た。
「いっそ、本当に付き合ってみるか?」
「…………ぶふぉっ!?」
凛が盛大にむせ返り、咳き込んだ。
「ゴホッ、ゲホッ! お、おま、いきなり何言って……!」
「冗談じゃないぞ」
俺は真剣な声で続けた。
「最初は、ただの気の合うゲーム仲間だった。男友達と同じノリで、何でも言い合える最高の親友だと思ってた」
凛は目を丸くして、俺の言葉に聞き入っている。
「でも、一緒にいるうちに気づいたんだ。お前が他の男と話してるのを見ると腹が立つし、お前の無防備なとこ見るとドキドキするし……お前と一緒にいる時間が、俺にとって一番大事なものになってた」
「拓斗……」
「俺は、お前とずっと一緒にいたい。親友としてじゃなく、一人の男として、お前の隣にいたいんだ」
イルミネーションの光が、凛の顔を照らす。彼女の顔は、寒さのせいだけではなく、林檎のように真っ赤に染まっていた。
「俺の彼女になってくれ、凛」
静寂。周りの喧騒が嘘のように聞こえなくなり、ただお互いの呼吸音だけが響く。
長い、本当に長い数秒間の後。
凛は俯いていた顔を上げ、照れ隠しのようにニカッと笑った。
「……遅ぇよ、バカ拓斗」
「え?」
「私なんか、文化祭の時に結城先輩振った時から、とっくに自覚してたわ! お前のことが好きだってな!」
凛はそう言うと、俺の持っていた缶コーヒーを奪い取り、自分のものと一緒にベンチの横に置いた。
そして、空いた両手で俺の頬をバシッと挟み込んだ。
「お前が私を彼女にしたいって言うなら……受けて立つ! 私の彼氏という最高難易度のジョブ、お前に任せてやるよ!」
「……っ! あぁ、全クリするまで絶対手放さねーよ!」
俺たちは顔を見合わせ、同時にお腹を抱えて笑い出した。
告白の返事まで格ゲーの挑戦状みたいなノリ。でも、それが俺たちにとっての一番の正解だった。
最高の親友ルートから、ついに恋人ルートへのフラグを回収した瞬間だった。


第7章:エピローグ編

夕暮れ時、恋人同士になった二人が手をしっかりと繋ぎ、ゲーセンに向かって笑顔で走り出すシーン
夕暮れ時、恋人同士になった二人が手をしっかりと繋ぎ、ゲーセンに向かって笑顔で走り出すシーン

クリスマスイブの告白から、1ヶ月が経った。
俺と凛は、今日も放課後のファミレスのボックス席に向かい合って座っている。
「おっしゃ拓斗! 今日のポーションは一味違うぜ! メロンソーダにコーラと、タバスコを少々……」
「だから腹壊すって言ってんだろ! ていうかタバスコは飲み物じゃねえ!」
相変わらずの漫才のようなやり取り。
周りから見れば、俺たちの関係は以前と何も変わっていないように見えるだろう。佐藤さんや鈴木さんからも「結局付き合ったの? え、変わんなくない?」と突っ込まれる始末だ。
だが、決定的に変わったことがある。
「ほら、お前も飲んでみろって! 意外といけるから!」
「絶対嫌だ。お前が飲んでからにしろ」
言い合いながら、テーブルの下で。
俺の左手と、凛の右手が、しっかりと指を絡め合って繋がれているのだ。
手汗をかかないか少し気にする俺の指を、凛はギュッと強く握り返してくる。その体温を感じるたびに、俺の心の中に甘い感情が広がっていく。
「なぁ、拓斗」
「ん?」
「親友で、彼氏って……なんか最強のジョブじゃね?」
凛がポテトを齧りながら、照れくさそうに笑って言う。
「違いない。何でも言える相棒で、しかも可愛い彼女とか、俺前世でどれだけ徳を積んだんだろうな」
「か、かわいいって言うなバカ! 調子狂うだろ!」
「事実だろ。ほら、顔赤いぞ」
「うるせえ! 表出ろ、ゲーセンでボコボコにしてやる!」
「上等だ。負けた方が今日のポテト代奢りな」
俺たちは立ち上がり、手を繋いだままファミレスを出た。
夕焼け空の下、駅前のゲーセンに向かって歩き出す。
「今日こそ私の新コンボで泣かしてやるからな!」
「返り討ちにしてやるよ、俺の愛しの彼女さん」
「っ〜〜! だからその呼び方やめろって!」
文句を言いながらも、凛は俺の手を離そうとはしない。
俺たちの関係は「親友」から「恋人」に変わった。でも、根本的なノリは何も変わらない。
一緒に笑って、ふざけ合って、ゲームして。
ただそこに、少しだけの甘さと、お互いへの絶対的な愛情が加わっただけ。
「俺たちは、最高に気が合う親友カップルだ」
俺がボソッと呟くと、凛は聞き返してきた。
「ん? なんか言ったか?」
「いや、なんでもない。早く行かないと筐体取られるぞ」
「おっ、そうだな! 走るぞ拓斗!」
俺たちは手を繋いだまま、走り出す。
これからも、俺たちの日常という名のゲームは続いていく。最高の親友で、最高の彼女である凛と共に。
バグみたいに騒がしくて、最高に愛おしい、俺たちだけのプレイスタイルで。